染液の中では微生物が生きています
江戸時代中期に盛んであった染色技法で、微生物の力によりじっくりと発酵を待ちます。
この方法は世界の中でも珍しく、日本の独自性があります。染液の中では常に微生物が生きています。微生物による発酵のため人間のコントロールできる範囲には限りがあり、染まりにくい日もありますが、そのぶん薬効も期待でき、着る人へのやさしさや安心感を感じられるのが良いところです。
この藍染は染色堅牢度が高く、洗濯機内での色移りは起こりにくいため、気兼ねなく他のものと一緒に洗っていただけるのがメリットです。
使用材料は5つ
- 「染料」は国産天然藍(タデアイをすくもにしたもの)を使用し、それ以外の染料(合成藍=インディゴピュア等)を混ぜることはしておりません。天然藍100%です。
- 「木灰」は静岡県焼津市の鰹節業者が使用した国産の堅木灰(クヌギ、コナラ等)を使用しております。
- 「水」はすべて天然水。工房のある有東木地区はワサビ栽培発祥の地であり、とても水に恵まれた土地です。
- 「ふすま」は、小麦の外皮部分で、染液中の微生物の餌となるものです。良質な国内産を調達しています。
- 「貝灰」は、カキなどの貝殻を焼いたものです。こちらも染液中の微生物の餌となります。
藍の建て方(染液の作成方法)
藍の染液をつくることを「藍を建てる」または「藍建て」と言います。当工房の手順は以下の通りです。
- すくもを計量し、たらいに入れる。
- 熱めの湯で、ある程度柔らかくなるまでこねる。
- こねたすくもを藍甕の中に入れ、その後、人が甕に入り、踏みつけてこねる。「踏み練り」と言う。
- 完全に泥状になるまで踏み練りをしたら、少し灰汁を足す。ぬめりの加減をみる。
- 一晩そのまま置く。寒い季節は保温をする。
- 翌日、状態を確認し、さらに灰汁を追加する。攪拌する。
- 数日これを繰り返す。灰汁の強さや追加量は、状態をみて加減する。
- 順調であれば、二週間ほどで藍は建つが、状態によっては一か月もしくはそれ以上かかることもある。
染め方
当工房では、一つの染物につき一日に染める回数は多くても2回までとし、次に染めるときは、間に天日干しを入れ、翌日以降にまた染めています。 また、染め1回ごとに、流水(沢水)ですすぎ、その後空気酸化をします。 染めあがりの最終仕上げとして、一晩流水に浸け置くことをし、その後天日に干し、室内で数日間の乾燥後、70℃程度のお湯で湯洗いを行い、また1週間ほど乾燥させます。仕上げだけで10日ほど必要となります。