世界最古の植物染料と言われ、藍染めの始まりは5000年前とも一万年前ともいわれています。
日本本土において、藍染めの最盛期は江戸時代中期頃で、日本における昔ながらの伝統的藍染めはタデ科のアイ(タデアイ)という草を用いています。現代の合成藍染めとは違う、薬品類を一切使用しない自然物だけの染色法です。染色したあとも変化する生きた染料です。
なお、インドではマメ科のアイ、ヨーロッパではアブラナ科のアイなど世界では多様な植物からアイを抽出しています。
当工房の染色法もタデアイ100%の藍染めです。タデを使うから「タデ染め」または「タデアイ染め」と呼ぶのが順当かと私は思いましたが、タデアイそのままを使うわけではなく“すくも”にしてから使うこともあり、ただ「藍染め」と呼ぶのが一般的なようです。
時代が下り、化学的な藍染めが現れるようになると、それらと区別するために「正藍染」や「本藍染」、「天然灰汁発酵建て藍染」等々の呼び方が現れました。
ここでは日本で江戸時代の中頃から明治時代初め頃まで盛んにおこなわれていた伝統的な藍染め(タデアイをすくもにしてから使用)についてご紹介します。当工房もこの方法です。
使用する材料
染料成分としてはすくものみ。あとの3つは助剤となります。これと天然水があれば藍染めはできます。
- すくも(藍染料)
- 灰汁(木灰の上澄み液)
- ふすま(小麦の外皮)
- 貝灰(貝殻の灰)
藍が染め付く原理
①藍草の成分(無色)
②刈り取りにより(藍色)が生成
③水に溶かす(薄黄色)
④布に染み込ませ酸化して発色(藍色)
藍草の中の染料成分の元(無色)→刈り取りにより酸化して藍色の成分となる(→日本における藍染めではそれを積み上げ、水を打ち発酵させ堆肥上にすることで、藍色の成分を濃縮して、保存および運搬しやすくします。)
この藍色の成分は水に溶けないため、ただ甕に入れるだけでは、布にまったく染まりません。水に溶ける性質に変えてあげます。
それが「藍建て」と呼ばれる日本古来から続く技法です。
水に溶けた状態では一旦黄色になっていますが、甕から引き上げ空気に触れることによって酸化し藍色に戻ります。こうして染色が完了します。
染色の技法(藍建て)
すくも(藍染料)を甕に入れ、灰汁と練り合わせ、加温することにより、微生物の活動を促し、藍色の成分を水に溶ける状態に変えます。
作業工程(染色)
- 布の事前処理
- 甕に浸す
- 洗う
- 干す
- 2~4の繰り返し*通常6回、濃色で10回以上
- 仕上げ洗い(当工房の特徴は、天然水による徹底した仕上げ洗い)
- 干す(日によく当てる)
- 灰汁抜き
- 干す(完全に乾かす)
- 室内の風通しの良い暗所で干す(1~2週間)
- 再度の灰汁抜き
- 干して箪笥にしまう(半年程度寝かせる)

藍染めされた布の特性、取り扱い
- 生地(繊維)が丈夫になる、しっかりする
- 紫外線を防ぐ
- 保温性が高まる
- 虫が寄らなくなる
- 抗菌、消炎作用がある
- 見て癒され、触れて癒される
- 色落ちはしても色移りはしないので、他のものと問題なく一緒に洗濯できる
- 灰汁が出るので2,3か月に一回は使わなくても洗う
- 洗うほどに雑味が取れ、色が冴えていくので、よく洗うことが好ましい
- 完全に色素が定着するまでには半年はかかる。数年箪笥に寝かせるとなお良い(時々洗うこと)
廃染料は畑の肥料に
伝統的な藍染めの素晴らしいところは、廃液や廃棄物が出ないということ。ゴミとして捨てるのではなく、すべて肥料として畑に返すのが習わしです。実際、畑の良い肥料になります。こうした循環は昔は当たり前だったことかもしれませんが現代においては大変価値を持つ事柄だと思います。


←(左写真)右半分が藍の染液をまいたところです。左半分に比べて草が多く茂っています。
→(右写真)ここは染布の干し場ですが、物干しの真下に列になって草が生い茂っています。
明治以降の化学的藍染めとの違い
明治以降の化学的な藍染めは、本来微生物の働きによって還元発酵させていたところを薬品類を使用し還元させるようになりました。また、染料そのものも化学合成されたものを使用しているなど結果としては同じ藍色ではありますが、そのプロセスは全く違ったものです。
まとめ
伝統的な藍染めというのは、大変シンプルな技法ですが非常に手間のかかる技法です。それでもなぜ楽な方法(化学的藍染め)を取らず、手間のかかる方法(伝統的藍染め)を取るのか。それは「肌にとっても環境にとって望ましいものがあるから」ということに尽きます。
藍染め工房たであい 


