納期に間に合わない藍染め

こんにちは。藍染工房タデアイの山口です。

この仕事をしていて一番もどかしいのは『納期』です。あらかじめ3週間なり4週間といった納期を設けて、それをお伝えしておりますが、その納期を守れないことが多々あります。

守れない納期ならば、最初から設定するなというお叱りはごもっともですが、だからといって納期の目安も無しでは失礼ですし、またあまりにも長い納期の設定はできません。

納期の設定は、理想どおりに行けばこのくらいで納品できる。という私の願いであり、努力目標です。本当に勝手ですみません、、。

藍を建てること

薬品を全く使用しない藍染めは、自然(微生物)が相手であり、その甕その甕で違うので、経験を積んだ染師でも一体いつ染め始められるのか予測できない。そういうものだと認識していただければ助かります。

当工房のように発酵による天然藍染は、絵の具やペンキのように、それ自体に色があるわけでもございませんし、レシピどおりに何を何グラム入れたらすぐに染め液ができました、というものではございません。

藍染屋の仕事は、染めることはもちろんですが、藍を建てる(染め液をつくる)ことがまさに特殊技能であり、秘伝でもあった時代があります。

藍を建てられることが藍染職人の矜持であるわけです。そこのところをご理解いただいた上で藍染職人と接していただけたら、きっと喜びます。

藍の調子や維持管理のこと

藍を建てることに成功しても、その後もずっと建てるときと同じように藍と接することが求められます。

毎朝、「今日は染められるだろうか?」と思いながら藍甕の蓋をそっと開けます。

もちろん前日の晩には、次の日しっかりと染められるように手入れをするわけですが、それでも当日の朝、蓋を開けるまでは分かりません。相手は自然です。(微生物です)

藍を建てるときと同じように、気の引き締まる毎日が続きます。その結果、染めることができない日もありますし、少しだけ染める日や、沢山染める日もあります。

要は、『藍の調子に合わせる』ということです。人間にできることは、出来るだけ藍の調子が良くなるように手助けや見守りをすることであって、人間が主体でのコントロールはできません。主体は藍です。

こういった心掛けが藍に接する上で一番大切なこととなります。何も私が信心深いとか、考え方がむかし風だとかいうわけではなく、藍に接すれば誰でもそうなっていくと思います。

染まらない日が続けば、お客様をお待たせすることになりますが、そこは無理して染めることも出来ず、もどかしいながらも、お客様へのお詫びのメールをしたためております。

天候のこと

天候はそれこそ、どうにもなりません。

皆様のご想像されることといえば、雨が降れば染め物が乾かないことですが、藍染屋にとっては染め物が乾かないと同時に、もっと深刻な問題があります。

藍染は天日に当てることで色が強くなる傾向があります。経験上ですが、堅牢度が上がります。天日に当てていない藍染はどことなく脆さがあり、不安定に見えます。(私の目には)

また、さらに大事なことは、天日に当てることでアクを抜くことです。これは当工房で最大限重視している、『肌への刺激』に関係する部分なので、当工房にとっては絶対に見過ごすことはできない事項です。

染め重ねるたびに天日に当て、流水で(当工房は湧き水を使用しております)十分にすすぐこと。これで僅かな刺激成分であるアクを抜き、敏感肌の方にも安心してご着用いただけるようになります。

というわけで、雨の日が続けば納期はどんどん後ろへいきます。仕方のないことです。

言い訳をお聴きくださりありがとうございます

今日は、長々と言い訳をしてしまいましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございます。

そういえば「紺屋の明後日(こうやのあさって)」と言うことわざがありますね。やはり昔から納期を守れないことが多かったようです。

藍染屋になった今分かることは、昔の紺屋も決して怠けてそうなった訳ではないんだな、ということです。皆様ぜひ、紺屋の納期については大目に見ていただけると助かります。

是非、今後ともご注文のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。