布に機能が染め付くメカニズム

こんにちは!藍染工房タデアイ代表の山口且真(かつま)と申します。

「色は見ればわかるけど、機能は見ても分からない。本当に染め付いているの?」こう思われる方もいらっしゃると思います。今日はそんな疑問についてお答えします。

↓前の記事

染色は色だけではなく機能を付与する

染色により機能が付与されるメカニズム

染色の際に植物の能力はどうやって布に付与されるのでしょうか?もちろんすべてが布に付着するわけではなく、流れてどこかへ行ってしまうものもあると思います。しかし、色とともに布に付着するものもあります。

色=機能のケース

ひとつは、色素成分そのものが薬理成分である場合です。この場合は色が付いたことイコール薬理成分の付着ですから、間違いなく布に機能が付与されたことになります。

藍染めの例で言うと、天然藍に含まれる黄色の色素であるケルセチンやケンフェロールは抗酸化作用や抗炎症作用、抗動脈硬化作用などがあり、赤色の色素であるインディルビンはその誘導体に抗がん作用や抗腫瘍作用などの可能性が報告されています。

色素成分とくっついて布に染め付くケース

もう一つは、色素成分に化学的結合をして、一緒に布に付着する場合です。藍甕の中に存在する乳酸菌類などの多くの微生物が布に移動すると考えられます。結合自体は水素結合やファンデルワールス力といった強固ではない結合ですが、色素成分と一緒に付着すると考えられます。

というより、むしろ色素成分のみを100%の純度で染め付けることは不可能でしょう。必ず何か不純物(有用微生物を含む)が染めつきます。その不純物も大切な恵みなのですね。

機能はいつまで布に残っているの?

もちろんずっととどまっているわけではありませんが、思うよりもずっと長くとどまっていると考えられます。

その理由は、染めついた成分のほとんどが脂溶性であるため、水には溶けず洗濯では容易に落ちないからです。事実、藍染めがそうであり、布との結合自体はそれほど強くないけれど、水に溶けづらいために日常の洗濯に耐えます。

とは言っても、まったく落ちないわけではなく、着ている間の擦れなどによって少しずつ落ちていくわけですが、このことが、逆に皮膚への作用の可能性をつくっています。

機能がいつまで残っているかと言えば、色が薄くなるにしたがって、だんだんと少なくなるということになります。

藍染めの場合、色合いの変化(だんだんと青みが冴えていく、逆に言えば赤や黄色や茶色の色素が抜けていく)からも分かるとおり、成分によって抜けやすいもの抜けにくいものがあります。

目安としては1~2年

私個人の感想になってしまいますが、肌着で標準色であればおよそ1年、濃く染めたものであれば2年程度はその効果を実感できます。もちろんそのあとも少ないなりに効果は感じられますし、着心地がいいことに変わりはありません。

まとめ

今日は、機能が布に染め付くメカニズムについて話をさせていただきました。

化学的に考えてみても機能は確実に染め付いていることが分かりましたね。そして、機能はすべてが見えないのではなく、色を持っているものも多くあります。

染め物を見たときには、色そのものが機能でもあると理解していただければ幸いです。